「これがあれば、できる」――自助具に込められた作業療法士の工夫
何気ない動作が、難しくなるとき
森
阿曽先生、今日は「自助具」についてお話を伺いたいと思います。
そもそも、自助具ってどんなものなのでしょうか?
阿曽(作業療法士)
簡単に言うと、「自分でできることを増やすための道具」ですね。
スプーンやお箸、ボタンエイド、靴べら、ペンの持ち手など、
日常生活の中で使う、ちょっとした工夫が詰まった道具です。
目次
「治す」より「続けられる」を大切に
森
リハビリというと、体を鍛えるイメージが強いですが、
道具を使うことも作業療法なんですね。
阿曽
そうなんです。
作業療法士は「できるようになるまで待つ」だけではありません。
たとえば、
「回復するまで食事を我慢する」よりも、
「今できる方法で、自分で食べられる」ほうが、その人の生活は前向きになりますよね。

自助具は、
その人の“今”の生活を支える手段なんです。
現場で印象に残っているエピソード
森
実際に現場で、自助具が役立った場面はありますか?
阿曽
もちろん沢山あります。とても印象に残っているのは、
手の力が弱くなり、「もう自分でご飯は無理かもしれない」と話していた方です。
スプーンの柄を太くする自助具を使ってもらったところ、
最初は半信半疑だったのが、
一口、また一口と食べられるようになって…。

食事が終わったあと、
「まだ自分でできることがあるんですね」
と、少し照れたように笑われたんです。
森
その言葉、とても胸に残りますね。
阿曽
はい。
自助具は、動作を助けるだけでなく、
自信や気持ちも支えていると感じた瞬間でした。
自助具は「選ぶ」より「一緒に考える」
森
自助具って、決まったものを使うのでしょうか?
阿曽
いいえ、実はそうでもないのです。
大切なのは、「何を使うか」より「どう使うか」。
その人の生活環境、手の大きさ、力の入り方、
そして「どんな暮らしを続けたいか」を一緒に考えます。
場合によっては、
既製品を少し加工したり、
身近な物で代用したりすることもあります。
作業療法士の仕事は、
“生活に合わせて工夫すること”そのものなんです。
学生たちが学ぶ、自助具の視点
森
作業療法士学科では、自助具についてどのように学ぶのですか?
阿曽
授業では、実際に自助具を使ってみる体験をします。
あえて利き手を使わずに食事をしたり、
手袋をつけたまま作業をしてみたり。
すると学生から、
「思ったより難しい」
「ちょっと工夫するだけで、すごく楽になる」
という声が上がります。
森
なるほど!体験すると、見え方が変わりますね。
阿曽
そうなんです。
自助具を通して、
“生活を見る目”が育っていくのが、作業療法の学びです。
自助具は、生活をつなぐ架け橋
森
最後に、自助具が作業療法士にとってどんな存在か教えてください。
阿曽
自助具は、
「できなくなったこと」を補う道具ではなく、
「その人の生活を続けるための架け橋」だと思っています。
誰かの「やりたい」を諦めずにすむ。
それを支えられるのが、作業療法士の仕事です。
高校生・進路を考えているみなさんへ
森
この記事を読んでいる高校生のみなさんへ、メッセージをお願いします。
阿曽
作業療法士は、
人の生活をよく見て、よく考えて、工夫する仕事です。
自助具ひとつにも、
その人の人生を大切にする想いが込められています。
オープンキャンパスでは、
実際に自助具に触れたり、授業の雰囲気を体感できます。
「人の生活を支える仕事」に少しでも興味があれば、
ぜひ一度、学校をのぞいてみてください。






