シリーズ③:雷と電気メスの意外な共通点

「雷と電気メスには共通点がある」 

そう聞くと、「え、違うものじゃん」と思うはず。まったく異なる世界の言葉ですが、実はどちらも“電気のエネルギー”を利用しているという点で深くつながっているんです。 

 

―まずは自然界のスーパーパワー『雷』― 

雷は、雲の中で大量の電気がたまり、それが一気に放電されることで起こります。 

雷の温度は約3万度とも言われ、自然界でもトップクラスのエネルギーを持つ現象です。 

―では、医療現場の『電気メス』は?― 

手術で使われる電気メスも、電気のエネルギーを利用して組織を切開したり止血したりする装置です。 

電気メスは数十万㎐という高い周波数の電流を体に流します。

電流が流れた部分の細胞が振動し、摩擦熱で組織が一瞬で高温になることによって、切開・凝固(止血)が可能になります。

つまり、電気メスは「コントロールされた小さな雷」と言えるわけです。 

 

雷と電気メスはスケールこそ違いますが、どちらも電気が流れるときに発生する熱エネルギーを利用しています。 

 

雷と電気メス。 

一見まったく違う世界に見えても、科学の視点で見ると同じ原理で動いていることが分かります。 

臨床工学技士のシゴトは、こうした自然の法則を理解し、それを応用した医療機器を安全に使いこなすコト。
電流の強さや周波数、接触部位の状態によって効果が変わるため、誤った使用は患者さんに危険を及ぼします。
雷が落ちる場所を予測できないように、電気メスも適切な制御がなければ思わぬ組織損傷を引き起こす可能性があります。

だからこそ、臨床工学技士は物理学的な理解と機器の特性を熟知し、医師と連携して安全な環境を整えるのです。 

さらに、雷から学べるのは「放電経路の重要性」です。
雷は高い建物や樹木に落ちやすいように、電気メスも電流の流れを考慮しなければなりません。
患者さんの体に貼付する対極板の位置や接触状態は、電流の経路を決定する重要な要素です。これを誤れば、意図しない部位に熱が加わり、合併症を招く危険があります。
 

電気メスは、まさに「雷の力を掌に収めた」ような存在。自然界のエネルギーを、精密に、そして安全に使いこなすために、臨床工学技士の知識と技術が欠かせません。 

 

雷って、私たちの生活の中でとても身近な自然現象。
でも、そのエネルギーの仕組みが、実は医療の現場でも活かされているなんて、ちょっと不思議で面白いですよね
 

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