医療機器の卒業式
こんにちは、臨床工学技士科のオティムです。
病院で働いていると、人の「入職」や「退職」だけでなく、静かに行われるもう一つの別れに立ち会うことがあります。
それは――
医療機器の卒業式です。
今日は知られざる医療機器との別れについてお話しします。
ある日、いつもの機器が消えていた。
点検表を確認しに行くと、そこにあるはずの機械がない。
先輩からの一言、、、
「更新になったよ」 「昨日で役目終了です」
そう言われて初めて気づきます。
長年当たり前のように使っていた医療機器が、もう現場には戻ってこないということに。
この機器は、何人の患者さんを支えただろう?
人工呼吸器、透析装置、輸液ポンプ、モニタ。
どれも、患者さんの状態が最も不安定な時間に、そばで働いてきた機器です。
夜中のアラーム。 緊急対応。 トラブルシューティング。
私たち臨床工学技士が駆けつけるとき、そこには必ず、この機器たちがいました。
文句も言わず、疲れた様子も見せず、ただ決められた役割を果たし続けてきた存在です。

書類上は「老朽化」「更新」
現実的な話をすれば、医療機器の卒業理由はシンプルです。
耐用年数 部品供給終了 最新機種への更新…
どれも正しい判断です。
安全を守るためには、必要なことです。
それでも、電源を落とされ、ラベルを貼られ、搬出されていく姿を見ると、
どうしても思ってしまいます。
「本当に、お疲れさまでした」と。
臨床工学技士は、機器の“最後の同僚”
医療機器は、患者さんと直接会話をすることはありません。
でも、私たち臨床工学技士は、その機器の癖も、弱点も、限界も、誰よりも知っています。
「この機種は立ち上がりが少し遅い」
「このアラームは、先にここを確認する」
それはマニュアルには載らない、現場で積み重ねた信頼関係です。
だからこそ、医療機器の卒業を見送るのは、一緒に働いてきた同僚を見送る感覚に近いのかもしれません。
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新しい機器へ、確実にバトンを渡す
医療機器は卒業しても、医療は止まりません。
新しい機器が入り、
新しい操作を覚え、
新しい点検項目が増える。
でも、その根っこにある考え方は変わりません。
患者さんを守るために使う
異常に気づくために点検する
「いつもと違う」を見逃さない
それらは、
卒業していった機器たちが、
私たちに教えてくれたことです。
医療機器にも、確かに歴史がある
医療機器は「物」ですが、
医療現場では「記憶」を持っています。
あの患者さんの回復。
あの緊急対応。
それを思い出すたびに、
私は心の中で、 小さな卒業式を開きます。
医療機器の卒業式。
それは派手でもなく、誰かに祝われることもないけれど、確かに医療を支えてきた証です。
そして今日も、
私たちは新しい機器とともに、
患者さんのそばで働き続けます。






